ジンくんと、しばしのさよなら

ジンくんがとうとう行ってしまった。
最後まで、湿っぽい言葉や姿を見せることなく、私が知っているいつものジンくんのままだった。


10月17日の16時20分ごろ、仕事の合間のトイレ休憩でスマホを見たらweverseから通知が来ていた。韓国語が堪能でもないのにアプリの言語設定を韓国語にしているので、通知を見ても即座に何の案件なのかを読み取ることはできなかったけど、ハングルを読みあげた時の音や字面で「あ、これはあの話かもしれないな」と思った。


特に今年に入ってからは覚悟する場面が多々あったから、驚きというよりは「いよいよか…」という気持ちではあったけど、お知らせを読んでそっとスマホを閉じた。目から勝手に溢れ出そうになるものを必死にこらえて、「頭が痛くて…」という典型的な仮病を理由に1時間の時間休を取得し、職場から出た瞬間にこらえていたものが一気に溢れ出た。


そこから約2か月。たっぷり時間があったような気もするし、物凄く早く過ぎ去ってしまったような気もする。




自分の気持ちに向き合ってみると、やっぱりこれから長期間会えないことに対する寂しさがどうやっても拭えない。私は2018年9月にファンになった。元々は他のグループのファンで、しかもそのグループと所属事務所のグループ以外はほぼ知らないような非常に視界の狭いファンだった。だから、当時のバンタンをリアルタイムでは一切知らないし、存在すらほぼ認識していなかったと思う。でもふとyoutubeに出てきたIDOLのMVを見て、その日から気がつけばジンくんのこと以外何も考えられなくなっていた。そんな出会いから丸4年が経過して、ファンとしては5年目に入った。幸いにも、突然色んなことが止まってしまう前にファンになっていたおかげで、日本での公演に合計6回参加することができた。その時の思い出が今も色褪せることなく心に残っていて、私の人生の宝物になっている。でも、最後に会えた日からまもなく3年を迎える。こんなことになるなんて。MAP OF THE SOULツアーの日程が発表された瞬間の興奮とか、京セラドームで6公演というトチ狂った数の公演が予定されているのを見た時の爆笑と大歓喜とか、ジョングクのお誕生日を日本でお祝いできると知った時の喜びとか、未だに覚えている。懐かしいな。

結局ツアーは無くなって、そこから会えない日が考えていたよりも遥かに長く続いて。アメリカでの公演は当時の私にはやっぱり障壁が多くて行けなくて、ソウルコンも外国人にとっては高いハードルが設定されていて、やっとの思いで参加できる条件が揃ったのが釜山コンだった。でも、最後の希望だった釜山コンも、出来ることは全部したけど、会場に入ることはできなかった。結果、最後に会えた日から4年以上、もしかしたら5年近くは会えないことになる。ファンになってから、会えなかった期間のほうが遥かに長くなる。これまでの会えなかった期間は、本当に本当に本当に抱えきれないぐらいたくさんのものを用意してくれてファンを楽しませてくれて、vliveやweverse liveでリアルタイムの姿が見られたり、weverseでの絶妙なコメント返しセンスにゲラゲラ笑ったり、かっこよくてかわいくて軽やかで健やかで愉快なインスタが更新されるのを喜んだり(ジンくんのインスタ、本当に大好き)、ありがたいことにジンくんのことを見つめている時はいつも幸せだったけど、そういったこともしばらくはお休みになると思うと、ただただ寂しい。よく、「ファンになってすぐの大きな熱量も、数年経てば落ち着いてくる」というけど、私はジンくんのファンになっていることを自覚してから今日まで熱量が落ちることもなく、むしろ日に日に自分の中でジンくんの存在が大きくなっていくばかりだったし、ずっとジンくんのことばかり考えている日々だった。これからの空白期間が、ただただ寂しい。


もう一つ、兵役義務の履行という事実そのものに対する感情。これまであんな風にただただ私を楽しませ、私に幸せをくれ、私を支えてくれた人が、これからしばらくは戦いに備えた訓練、武器を扱う訓練、それには国やそこに暮らす大切な人たちを守るという大義があるけれども、結果的にその先には人を殺める行為だって存在する、そういうことのための訓練に従事しなければならないという事実の重さに絶望するし、どう向き合えばよいのかわからない。思い返してみると、他のグループのファンだった時、グループの中でも特に好きだったメンバーの入隊・除隊を経験しているけど、その時はどうやって乗り越えていたのかな。記憶も薄れてきているけど、もしかしたらここまでちゃんと考えたり向き合ったりできていなかったのかもしれない。私が好きだったメンバーは、義務警察や陸軍の中でも軍楽隊というところで兵役義務を履行したので、陸軍の現役兵とは訓練の内容にも差があっただろうし、色んな広報イベントで人前に出てくることも多くあって、ファンがイベントに行って撮った写真をこれまでと同じように見ることができる状態だったというのもあると思う。

でもそういった違いは今回のこの感情の主たる理由ではたぶんなくて、今の世界の様々な情勢を受けて、私の気持ちが良くない方にずるずると引きずられてしまっている部分があるからだと思う。私は幸いにも、日本で戦争のない時代に生まれ育ち、生きてきたし、色々な面で平和に安全に、それなりに快適な環境で暮らしてこられたと思う。でも今年の2月からは、ロシアとウクライナの間で発生したことを液晶画面越しに目の当たりにして物凄く大きな衝撃を受けたし、そういった事象について考えることが凄く増えた。毎日SNSを通じてそういった事象に関連する情報を収集して現実を見てみると、素人なりにも少しずつ視野が広がったり見えてくるものがあったりする。私が暮らす日本や東アジアという地域の状況、韓国と北朝鮮、中国、台湾、日本といったこの地域は物凄く不安定な状態で。もう少し視野を広げてみると、遠く離れた場所で起きている色んなことも、私の暮らしに今後も影響が出ないことなんて無くて、他人事なんかではなくて。一方、日本国内に目を向けてみると、日本の安全保障政策は急速に大きく変化していて。今まで自分が生きてきたような環境が当たり前に続くわけでは無い、これまで自分が経験したことない大変な時代がやってくる、様々なことがもう目の前に迫っている、いつ何が起きてもおかしくない状態なんだなということに、情けなくもようやく現実感を持ったりもして。ただ安全に平和に暮らす、今の生活がこれからも続いていくということについて、かなり不安が募っているし、心的な負担が大きい。だから「溜まっているコンテンツを見ていたらそのうちすぐ帰ってくるよ!」とか「韓国語勉強しながら待ってよう!」とか「入隊してしまえば18か月なんてすぐだよ!」とかそんな風に前向きに考えることがまだ私には難しい。今の自分の暮らしやジンくんたちがこれから置かれることになる状況が悪い方に変わることはないとポジティブに捉えることがかなり難しい。ジンくんが帰ってくる時、世の中はどうなっているのか?ましてや、グループ活動を再開できればとバンタンが考えている2025年なんていうのは、今の私にとってはあまりにも遠い未来だ。結果、何も変わっていないかもしれないし、奇跡的にもポジティブな方へ世の中が動いていく可能性も0ではないし、私がここで悩み苦しんだところで世の中が劇的に変わるわけでもないけど、これからもバンタンを続けていきたい、2025年にはグループ活動を再開できたらという7人の意思、そしてそれをこれからもずっと見守り応援したいという私の気持ちとは関係のないところで激しく動いているあまりにも不安定で大きな事柄に、どうやって向き合い、どうやって進んでいけばいいのか、まだ私にはわからない。



今日を迎えるまで、ジンくんのファンとして、バンタンのファンとして、彼らの兵役義務の履行に関して苦しいことが本当に多かった。結局誰がジンくんのこと、バンタンのことを人間として扱ってくれたのか、私たちと同じように感情を持った人間だと誰が理解してくれていたのか。本当に虚しく、悲しかった。


例えば国、政府、政治家。バンタンの兵役義務の取扱いに関する議論が出てから、本当に長い間振り回された。議論を始めたもののいつまでも結論を出さなかった議員たち。「万博誘致活動を兵役の代替義務に」とか意味不明なことを言い出した地方都市の首長。所属事務所から入隊期限延期の取消しを発表し、通常通りの入隊の意思を改めて示してもなお、兵役期間中に練習をさせて海外公演をしても良いだなんだとかいう国防部。バンタンはあなたたちが政治活動の成果を上げるための道具ではないのだが。挙句には、ジンくんの入隊日や入営する訓練所の情報を、軍関係者が約3週間も前に報道機関に漏らすというありえない事態。結果、本人がweverseで「望まない記事が出てしまった。他の人もいるし危ないから訓練所には来ないように」なんて言わないといけなくなってしまった。3週間もあれば、国内はもちろん、海外からも人間がやってくることができてしまう、予定を調整できてしまうのに。事実、"""ファン"""がたくさん来るから警備に警察や機動隊など多くの人を出すことになるなどの記事が出たり、そのせいで「一人のアイドルのために税金の無駄遣いだ」なんてジンくんが叩かれたり。幸いにも、今日現地に行った"""ファン”""は少なかったようだけど、だからといって軍関係者のその軽率な行動が許されるわけではない。


例えば色んなメディア。本人たちは一度も「行きません」と言ったことなど無かったのに、7人に批判の声が向けられるような悪意のある報道もたくさんあった。再生回数やPV数を稼ぐための道具に利用されているものも数えきれないほどあった。入隊するにあたってジンくんが髪型を変えた写真を「かわいい」と報道した日本の番組もあったとか。ジンくんがファンに向けて発信したその写真と「wwwww思ったよりかわいい」というコメントを、メディアがそうやって解釈して使ってしまうの、絶望するよな。他にも「順次入隊する」と発表した途端、それによって失われる経済効果についての記事が出たりするのも虚しかった。そういう視点で報道する媒体があることはわかっているしそれがその人たちの仕事で必要なことであるのもわかってはいるけどさ。バンタンはお金を生み出す機械で、韓国経済に影響を与える商品で、というのもわかるけど、そういう記事を目にした時のこの気持ちを、私はどう整理すればよかったんだろうか。こういったデリケートな事案に関する膨大な量の報道の全てにジンくんやバンタンの写真が貼りつけられているのを、「【速報】」とつけて全世界に一斉に報道されていくのを、私はどんな気持ちで見ていればよかったのか。ジンくんは、バンタンはどんな気持ちで見ていたのかな。


例えば一般大衆。しかも世界中の。私は日本語話者なので主に日本語の反応を目にしたけど、普段彼らに特に関心のない人やいわゆるネトウヨのような人たちが、どこかから仕入れてきた「韓国の兵役」に関する知識を元に、バンタン(や、兵役義務を履行しなければならないたくさんの方々)に対する侮辱的な言葉を平気でインターネットの海に放流していく様を見るのもなかなかに心がえぐられた。自分の人生に登場しない、わざわざ登場させる必要のない人の生死に関する言葉、暴力的なまでに人の不幸を願う言葉を普通に気軽に吐ける人がたくさんいるんだな。私はそういう状況は本当に受け入れられないけど、もしかしたらそういう私がおかしいのであって、今はもうそんなことは普通の感覚なのかもしれない。おそらくどの言語圏でも大差ないのだろう。ため息が出る。


例えばアンチ。他のK-POPアイドルたちの一部のファン。まあ期待する方が悪いけど、それにしてもあまりにも表層的な、感情的な、浅はかな考えを恥ずかしげもなく披露できる人が本当に多いんだな。私たちの""推し""の邪魔になるから、目障りだから、何となく気に食わないからという理由で、バンタンには何を言ってもいい、どんなひどい言葉をぶつけてもいいと本気で思っている人がどの言語圏にも山ほどいるもんな。兵役義務のない女性グループのファンの「最前線で死んでくればいいのに笑笑笑笑笑」という英語のツイートを泣きながら通報した時のあの気持ち、私は絶対に忘れないよ。(それにしても、すでに兵役義務を終えた方々のファンはともかく、これからそれを控えている方々のファンにもあれほどまでに攻撃されるとは。バンタンの兵役問題は、韓国国内における大衆音楽やその従事者の地位、認識について考える機会にもなっていたわけだけど、そういうところには一切関心が無い様子なのが不思議だった。「バンタンに勝った」と考えているファンが考えているグループのメンバーも、「バンタンに勝った」のであれば近い将来この議論に直面することになると思うのだけど…。)


何より、ファンを、ARMYを名乗りながら、ジンくんのこともバンタンのことも人間のように扱わなかった人たち。私が最初にジンくんの兵役に関連した話題に接したのは、2019年4月に公開されたBoy With LuvのMVだった。最後に7人で叫ぶシーンの直後、「時計の針の音が鳴っていて、ナムジュンだけが少し険しい顔をしている」シーンが、ジンくんの入隊が迫っていることを暗示していると考察されているのを見た。それ以後、例えばジンくんのパートが多いとか、ジンくんが何か目立つような部分があった時に、全てを兵役に繋げる人たちを何度も見て、そのたびに虚しくなった。ジンくんのことを、他の6人のメンバーの庇護者としてしか認識していない人も何度も見た。兵役義務というデリケートなことだって、異常な承認欲求を満たす道具、共感自慰行為のための道具として消費する人だって数えきれないほど見た。都合の悪いことは公式以外信じない!と言うのに、公式から何も発表されていないデリケートな話題を嬉々として拡散していく人も数えきれないほど見た。これ以外のことでも、理解できない人だらけだ。なんであの時期にジンくんが兵役のことで冗談を言うと思うの。なんで大きな声でポエムを読んで気持ちよくならないと気が済まないの。なんで少し黙って様子を見守ることができないの。なんで自分の頭で考えられないの。なんで物事の善し悪しが判断できないの。なんでバンタンの言葉は聞かないのに"""ファン"""の言葉や意味不明なデマは洗脳レベルで信じているの。なんで自分で調べないの。なんで全部バンタンが、自分の好きなメンバーが一番じゃないと許せないの。なんで他のメンバーや他のグループを下げないと自分の好きな人を好きでいられないの。頑張ってきたのはバンタンであってファンではない、凄いのはファンではないっていつになったらわかるの。なんで自分たちが正しい"""ファン"""だと信じて疑わないの。なんでそんなあなたたちが恥ずかしげもなく"""ファン"""を自称するの。なんでジンくんの、バンタンの頑張りも優しさも配慮も全てを土足で踏みつぶしていくの。


こういったこと全ての先にいるのは、たった一人の人間で、たった七人の人間だということを、いったいどれだけの人がちゃんとわかっていたのかな。その先にいる人間のこと、私たちと同じようにこの瞬間も生きていて、同じように感情を持った人間であること、一人で、七人で、ありとあらゆるところから殴られて蹴られて侮辱されて踏みつぶされ続けた人間のこと、考えていた人がどれだけいたのかな。



ジンくんの様々なソロ活動の中で、ジンくんが一人の人間として、持ち上げられすぎることも踏みつぶされることもなく対等に扱われ、大切にされている様子がたくさん垣間見えたのが物凄く心に残っている。サンヨプさん、ナムギルさん、ヨンボクシェフ、ペク先生、ロクダム師匠。みんな、ジンくんのことを一人の人間として見ていて、愛情を持って接しているのが凄く伝わってきて、そういったコンテンツを見ていてただ幸せだった。特にペク先生、ロクダム師匠との伝統酒造りのコンテンツは本当にあったかくて、何度も何度も繰り返し見ている。



私が何より一番嬉しくて心に残っているのは、やっぱりクリスマーティンだ。子どものころから憧れのColdplayと、昨年のグループ同士のコラボから生まれた縁がこうやって続いたこと。ジンくんの気持ちを汲み取って理解して、素敵な曲を作ってくれたこと。アルゼンチンでの自分たちの公演に招いてくれたこと。


その公演で、ジンくんのステージの前に、クリスがお客さんにこんなことを語りかけた。

約6か月前、彼らのメンバーの一人から連絡があり、「僕は12月に、2年間バンドを離れ、国のルールで韓国の軍隊に入らなければならないんです。」と言いました。
「みんなにしばらくさよならを言うための、みんなに愛していると伝えるための歌が必要なんです。」と。
他のバンドと同じように、僕たちは皆さんを必要としているんです。本当にすべてのことはあなたたちがもたらしてくれるんです。魔法をかけてくれるのは皆さんなんです。だから僕は「オーケー、一緒に歌を作ろう」と言いました。

 

彼は韓国からはるばるやってきました。
数年の間、彼に会うのはこれが最後になります。彼は軍隊に入らなければならない。
これは重大なことで、うまくいくことを願っています。
お願いします。最大級の、素晴らしい歓迎を!兄弟に、兄弟バンドに!
"The Astronaut"、ジンです!Let's go!


この公演のライブビューイングを見に行った人ならわかるのではないかと思うけど、この公演のここまでの流れとか様々な演出に込められた思いとか会場の雰囲気とか、そういうところがとても素晴らしかった。その上で、アンコールの大事な部分でこのお話をしてくれた時のクリスの表情や話し方から伝わってくるものが物凄くあって。特に、兵役義務のことを”serious stuff”なのだと言ったことが、私は物凄く印象に残っている。ジンくんやバンタンにとってのこの問題が、様々なところであまりにも軽く扱われたり当然のことだと言い捨てられる様子をずっと見てきた。クリスは重みをわかっていたような気がした。

曲が始まり、花道の先で1番を歌い終えたジンくんを、ステージで満面の笑みで両腕を広げて待ってくれていたクリス。花道を駆け抜けて笑顔で飛び込んだジンくん、あたたかく優しいハグとキスで受けとめてくれたクリス。表層的な部分だけでなく、そこに至る過程全てを含め、何もかもが本当に映画のように美しいシーンだった。そして、私が一体どんな立場でこんなことを言うのかというのはあるけど、ただただありがたいと思った。ジンくんが理不尽に非難されたり叩かれたりそんな状況が悲しくて苦しくて虚しくて怒っていた私が、でもいつも明るく愉快に振る舞い続けたジンくんを心配しながら見守って自分なりに大切にしてきた私が、そしてもしかしたら他のジンくんのファンたちが、ジンくんにしてあげたかったことだった。クリスがジンくんにしてくれたことは、私がずっとジンくんにしてあげたかったことだった。でも私にはそれはできないから、代わりにクリスが、大きな愛情と優しさを携えてジンくんにそうしてくれたことに、本当に本当に心から感謝している。そこからのびのびと歌うジンくん、韓国語のコーラスまでしてくれるクリス、全てから解き放たれたかのように両手を広げて笑顔でステージを舞うジンくん、それを笑顔で見守ってくれるメンバー、ステージの真ん中へ誘ってくれるクリス、向かい合い一つのマイクで歌うジンくんとクリス、花火をたくさん打ち上げてくれる演出、大きな歓声を送ってくれるお客さん。映画館でめちゃくちゃに泣いてしまった。ジンくん、本当に幸せそうだった。自分が心から本当に本当に本当に大切に思う人が、あんなに幸せそうに輝く姿を見つめることができるというのは、何と素晴らしく、素敵なことなのだろうか。しかもその人がそんなに幸せそうな姿で歌っているのは、私たちに向けられたあまりにも大きな愛情と優しさでいっぱいの歌だ。4年間ジンくんを見てきて、もしかしたら一番幸せだったかもしれない。大切すぎて抱えきれない宝物だ。


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こんなにもつらつらと言葉を綴ってきたけど、本当は自分でもよくわかっている。私はジンくんにこんなにも沢山楽しませてもらって、幸せをもらったのに、私はジンくんに何にもしてあげられなかった。ジンくんが苦しいはずの時も、コンテンツを大切に見たり、weverseでメッセージを送ったり、悪質なコメントを泣きながら通報したり、そんなことしかできなかった。しかも、兵役はBTSのジンとしてではなく一人の韓国人であるキムソクジンとして課せられる義務なのに、結果的には自分を含めたファンの存在が、兵役義務の履行や入隊時期の選択というジンくんの人生においてとても大きな事柄であろうことにまで影響を及ぼすことになってしまったこと、寒がりなジンくんが、韓国の厳しい冬を二度も軍隊で迎えないといけなくなってしまったことの罪悪感とどう向き合えばいいのか。もちろんこういう仕事であるので、普通の人生を送ることが難しいことは覚悟しているかもしれないけど、それでも、ジンくんが一人の人間として大切に扱われてほしいとこれほど願っていたのに、私自身もジンくんのことをどこまで大切にできていたのだろうか。


ジンくんが、アルゼンチン公演の直前のweverse liveで、入隊時期について詳しく説明してくれた後の言葉。

元々僕は6月に入隊する予定だった。でもファンの方々との礼儀や義理を守るために10月の公演(釜山コン)まで待っていた。涙の公演にしたくなくて、発表が遅れた。僕たちは涙の公演にしたくなかっただけなんですが、あちこちから、「入隊しない方がいいんじゃないか」、もう一方では「絶対に入隊しなければならない」という話が過熱して、そういうこともあると思いましたが、たくさん叱られました。でも、残念ではありますが、ファンが涙を流す公演にならなくてよかったと思っていますし、叱られましたがそれなりに満足しています。僕も人間なのでインターネットを見るんですが、僕たちに関するコメントを見ると、「まだ行っていないのか、早く行け」「まだ行かずに何をしているんだ」というコメントを見ながら心を痛めていました。僕たちは準備も終えて行くはずだったのに…。

わかっていたけど、本人の口から、あんな表情でこの言葉を聞くの、ただただつらかった。本当にファンというのは無力だ。


The AstronautのMV撮影のビハインド動画で、撮影を応援しに来たホビと話しているこんなシーンがある。

ホビ:(ジンくんが自転車を漕ぐ子どもを支える手を離すシーンを見ながら)手を離したらどうするんですか兄さん~!
ジン:送り出してあげるコンセプトだよ。
ホビ:支えてあげないと!
ジン:「君一人で元気に生きてね 今まで支えてあげたんだから」、そんな感じなんだよ。

MVに出てくる子どもはファン、ARMYを表しているというのはよく言われている話で(本人がそういったわけではないからもちろん真偽は不明だけど)、それを踏まえて聞くと、言葉の重みにうなだれる。私を含め、ジンくんに人生を支えてもらった人、もしかしたらそんなことはもう忘れて暮らしている人、これからもジンくんの支えを必要としている人。ジンくんにはジンくんの人生がこれまでもあってこれからも続いていく。あまりにも自分勝手な存在に自分の人生が、人生計画が壊されても、まだその存在のために日々努力して色んなことを我慢して。アイドルって、アイドルとファンの関係性っていったい何なんだろうな。誰かがどれだけ自分のことを人生の支えにしても、その人は気ままに勝手に離れていくし、挙句には悪口までぶつけられることだってあって。自分で選んだ仕事、自分で選んだ道ではあったとしてもさ。じゃあそんなジンくんの人生は誰が支えてくれるのかな、とかさ。

このシーンは、ホビが応援に来てくれてジンくんのテンションも超上がっている時だったし笑、もしかしたら「そんな重たく受け止めないで」といつもみたいにケラケラ笑うかもしれないけど、それでもこの言葉とか、しばらくのお別れの前に私たちに届けてくれた素敵な曲の最後の歌詞が”and I love you”であることとか。どういう境地にいるんだろう?昨年、ジンくんのお誕生日をお祝いするために、LAコンでアミボムにかぶせるための膨大な数のお月様を手作りして配布したアミに「僕が誰かを好きになったら、僕はこんなにできるのかなと考えながら… 正直、僕はできないと思います。でもそれをしてくださったんですよね。本当に感謝しています。」と伝えてくれたジンくんだけど、私はジンくんにその言葉をそのままお返ししたいよ。ファンのためにという気持ちだけでできることではないことを、数えきれないほどしてくれたよ。



これから、毎日韓国の天気を確認するだろう。日常生活の中で、「寒いな」と思う時には必ずジンくんのことを思い出すだろう。そしてジンくんに対して申し訳なく思い、健康と無事を願うことしかできない自分の無力さに苦しむだろう。こんな考え方、のめり込み方は間違っていると、おかしいと、どこまでもいっても他人なのにそんなに罪悪感を抱く必要ないと、そんなことは冷静に指摘されなくてもわかっていて、私にとって「ファンでいること」というのは、「推し」とか「推し活」とかそんな軽々しい言葉で表現できるものではなくて、多くの人たちと感情を共有してキャッキャ言うことではなくて、もっと大きくて、深くて、信じられないほど重くて、割り切れなくて、不健康で、切実で、湿度がとても高くて、代わりの何かでは決して埋めることができなくて、言葉ではどうやっても表現できないこの愛情を、外野から何を言われようがけなされようがバカにされようが、隅っこで一人でじっと大切に抱きかかえていることだ。ジンくんと同じだけの年月を生きてきたのに、人生でこんな気持ちになったことがなくて対処法がわからなくて特にここ数か月は泣いてばかりで社会生活に影響が出てしまったりもしてアホだってわかってるけどどうしようもなくて。



11月19日に、ジンくんにお手紙を出した。ファンとして生きてきたこの4年間、幸せをたくさんもらったこと、たくさん支えてもらったこと、たくさん助けてもらったこと、これまでもこれからもいつも感謝していること、しばらく会えないのがとても寂しいこと、何があってもジンくんの人生の味方であること、ジンくんが私たちに示してくれた礼儀に私なりに応えながら帰りを待っていること、どうかいつも安全で健康でいてほしいこと、そしてまた必ず会いたいことを書いた。4年分の思いがあるから、伝えたいことが多すぎて凄く長い手紙になったけど、何度も何度も文章を推敲して、インターネットを駆使して時間をかけて韓国語を調べて、悩みながら便箋を選んで、丁寧に清書して、郵便局へ出しに行った。郵便追跡サービスで確認すると、ファンレターの送り先へ11月24日に無事到着したようだった。私個人が誰であるかを認識してほしいわけではなく、むしろその真逆で、私が知っている防弾少年団のジンの人生も、私が知らない、そしてこれからも知ることのないキムソクジンの人生のことも、遠くからいつもそっと応援している人がいることを、ジンくんが必要とする時に思い出してもらえたらいい、不要になったら片隅に追いやってくれていい、ジンくんがファンの力や愛情を必要とする時、いつも必ずその集団の中のひとかけらでありたい。キムソクジンという人間の人生計画に、ファンという存在のうちの一人である自分が良くない影響を与える分子になってしまったことへの罪悪感をずっと抱えて生きていく私にはあまりにもおこがましいけど、それでも、私の手紙が、他のファンからの心のこもったお手紙と同じように、寒がりなジンくんの心をほんの少しでもあたためられたら、これからジンくんに苦しいことがあった時、何とか乗り越えるためのエネルギーのわずかな一端を担うことができたら、そんな気持ちで書いた。



いつも私の好きなジンくんでいてくれてありがとう。私の、私たちの好きなジンくんでいることはジンくんにとって負担もあるだろうけど、そんな負担があることを私たちに感じさせず、軽やかで、朗らかで、穏やかで、健やかで、柔らかなジンくんでいてくれて本当にありがとう。この先ジンくんにも私にも何があろうと、きっとずっと大好きだと思う。ジンくんが私たちに示そうと考えてくれた礼儀に、ジンくんとジンくんがくれたたくさんの宝物を大切に抱きしめながら丁寧に愛しながら帰りを待つという、私なりの最大級の礼儀で応えたい。



ジンくんやバンタンを4年間見てきて、楽しさも幸せも喜びも虚しさも悲しさも怒りもたくさん経験したし本当に色んなことがあったけど、それでも今、この4年間で一番ジンくんのこともジンくんが用意してくれた、届けてくれた全てのことも心の底から大切に思うし感謝しているし、私の中にある全ての愛情をジンくんに贈りたい。



どうか、お気をつけて。幸せな瞬間ができるだけ多くあるように、というのはしばらくは難しいかもしれないから、せめてできるだけあたたかくして、怪我なく安全で、健康でいられますように。ジンくんの支えなしで生きていくのは私にはまだ難しいけど、何とか頑張ってみようと思います。ナムジュン、ユンギ、ホビ、ジミン、テヒョン、ジョングクのことを全力で応援しながら、全員を大切に見送りながら、ジンくんやバンタンがたくさん準備してくれたコンテンツも何度も見ながら、ずっと待ってるね。



明後日で、最後にあった日から3年。また会う日には、5年ぶりだねって観客席で泣きながら、笑顔で出迎えたい。そんな日を、心から楽しみにしてるね。



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